派遣先である有料老人ホームでは、3ヵ月前までは申し送りがありませんでした。
ボクが派遣される前に諸事情(下記にて解説しています)により廃止になっていたのです。
介護職員各自が始業時間「前」に記録(電子カルテ)にパソコンやiPadで目を通し、必要な情報は自分のメモ帳に書き写す、「申し送り廃止」という形を取っていたのです。
㊟ただし、急変のリスクが高い方や転倒・転落などの事故があった方のみ、2~3分の申し送りはありました。
ですが3ヵ月ほど前から申し送りが「再開」されたのです。
その経緯について書いていきたいと思います。

お疲れさまです。
40代、現役「派遣」介護福祉士の小林です。
今回の記事は、
- 「申し送り時間が長い!(特に夜勤⇒日勤の申し送り)」
- 「必要ない情報まで話す人がいる」
- 「内容が重複する申し送りって意味ない気がする……」
と思っている介護士のあなたにとってお役に立てる情報であると思います。
申し送りの「是非」と「質」について考える機会になれば幸いです。
介護士間の申し送りを廃止した経緯

ボクは現在の派遣先である高級有料老人ホームに、半年ほど前に派遣されてきました。
労働環境がとてもいいので契約の更新を続けています。
事務長からは正社員の採用の声もかけていただけているのですが、まだ国のおこなう介護士の処遇改善がいまいちな状態なので、正社員には踏み切れない状態です。
ボクの話はさておき、この有料老人ホームで申し送りが廃止されたのは1年ほど前のこと。
ボクが派遣されてくる半年ほど前のことです。
なので、ボク自身はその流れに立ち会っていなかったので、当時申し送り廃止の是非についておこなわれた会議の議事録の内容と、会議に出席していた介護主任の方に聞いたお話を要点をまとめてご紹介します。
なぜ申し送りを廃止する流れになったのか?

申し送り廃止を提案したのは看護部長でした。
廃止の理由は、「朝の忙しい時間帯に長時間の申し送りをしてしまうと、フロアが手薄になってしまい転倒・転落などの事故の確率が非常に高くなってしまう」というものでした。
確かに9時という食事介助後の口腔ケア・排泄介助のコール対応など、人手が必要な時に申し送りをする夜勤1人、日勤2~3人が長時間の申し送りに取られてしまうということは、フロアで事故が起きてしまうリスクを格段に高めてしまいます。
事故報告書のデータとしても、朝の申し送り時間帯に利用者の方の事故が多いという、客観的な事実もありました。
介護士の中には15分以上、長い人では30分近くも申し送りをしてしまう人がいました。
特に夜勤リーダーから日勤への申し送り時には、夜勤明けの解放感からか長時間化が顕著でした。
なので、申し送りを廃止して日勤者は勤務時間開始と同時にフロアに出て介護業務を行う対策が取られたのです。
このことによって実際に転倒・転落などの事故発生率は低下したそうです。
ですが、見逃してはならないデメリットがあったことも事実です。
それは、介護士が始業開始時間15分ほど「前」に、各自で記録をチェックするという無償の時間外労働が当たり前におこなわれるという、介護士からの労働搾取ということが問題にすらなっていなかったということです。
申し送り廃止のメリットとデメリット
ボク個人の意見としては、無意味に長い非効率的な申し送りは廃止すべきであると思っています。
ですが、申し送りを廃止することによって生まれたメリットだけではなく、デメリットもあるという話しを介護主任からうかがい、考えさせられることとなりました。
申し送り廃止のメリット

- 朝の忙しい時間帯のフロア内のスタッフが充実した。
- 介護士が気持ちに余裕を持って働けるようになった。
- 転倒・転落などの事故、ヒヤリ・ハットが減少した。
申し送り廃止のデメリット

- 始業開始時間前の業務が当たり前になってしまった。
- 記録への目の通し方が職員によって大きく異なってしまう。
- 情報共有の意識が薄れてしまった。
物事にはすべてにおいてメリットとデメリットがあるように、申し送り廃止についてもこのようなメリットとデメリットがあることがわかりました。
この結果をみて、介護士の申し送りについてあなたはどう思われたでしょうか?
申し送り廃止を「廃止」することとなった流れ

申し送り廃止当初は、
- 「仕事がしやすくなった」
- 「利用者の方に気持ちの余裕をもって接することができる」
- 「ムダに長い申し送りにイライラすることがなくて快適」
という意見が多く聞かれた。
だが日が経つとともに、
- 「記録をちゃんと読んでいない人がいる」
- 「なんだかバラバラに働いているような感じがする」
- 「知っているべき情報を知らずにいることがあって焦った」
- 「始業時間前の勤務=タダ働きが普通になっているのはおかしい」
という介護職員からの不満・不安が多く聞かれるようになった。
ということなのです。
そして再び申し送りの是非についての介護士間のミーティングと介護主任・看護部長・施設長などの上層部での会議が開かれ、その結果申し送り廃止を「廃止」することになったのです。
申し送りを再開するにあたっての対策

申し送りを再開するにあたり、ただ漫然と元通りに申し送りをしましょうとしたわけではありません。
やはり必要と思われた申し送りをいかに効率化し、長時間化を避けるかの取り組みがおこなわれたのです。
その具体的な取り組みについて解説します。
10分のタイマーを設定して時間が来たら強制終了
- 朝礼の挨拶後、100均で購入したタイマーで申し送り時間を10分に設定。
アラームが鳴った時点で申し送りは強制的に終了し、フロアに出ることを義務づけた。 - 申し送りの初めにまず「急変のリスクの高い方」「転倒・転落・誤嚥・誤薬などの事故の報告」をすることを徹底した。
結果:2ヶ月後ぐらいには10分を過ぎても申し送りを続けてしまう職員が増えてしまった。
時間内に終えることができなかった場合は、その理由を看護部長に報告することを義務付けた
これは正直やりすぎだろ……という意見も多く聞かれたが、これぐらい徹底しないと状況が変わらない事実があるという介護士間の話し合い+上層部からの指導がおこなわれた。
結果:申し送り時間10分以内は習慣化され、事故やヒヤリ・ハットのリスクは減り、介護職員の労働環境も改善した。
まとめ
ボクはこの申し送りについての介護士の積極的な取り組みと、施設側の柔軟な対応について高く評価しています。
特に介護職の時間外労働は無償=タダ働きという「悪習」について向き合い、真摯に改善していった点については素晴らしいと思っています。
トップダウンで上層部が決めたことを現場で働く介護職に押し付けるだけではなく、介護士からの声も汲み上げ、利用者の方にとって質の高いケアサービスを提供する、介護士が働きやすい職場環境を整えるというボトムアップの流れがあったからこそなしえたのだと思います。
介護士は使い捨てだとしか思っていない、旧態依然(昔のままで少しも進歩や発展がないこと)とした運営しかしない、悪辣運営陣が経営しているブラック介護施設ではこのような流れは見られません。
介護業界はまだまだ時代遅れの運営方法をしている、劣悪な労働環境のブラックなところが多いのも事実です。
ですが、利用者(高齢者)の方に対するケアサービスの向上、介護職員の労働環境の改善に積極的に取り組んでいるホワイトな介護施設も少しずつですが増えてきているのです。
劣悪な労働環境で働かされている介護士は積極的にドンドン転職してしまい、ブラックな運営方針の上に漫然と胡坐をかいている介護施設は一日も早く潰れていって欲しいと思っています。
ブラック介護施設は淘汰されていくことが、介護業界健全化の最短の近道だとボクは信じています。